ナースX『コウノドリ』第1シーズンで、もっとも過酷な現実を突きつけられたのが新生児科の新井先生でした。
24時間365日、小さな命を背負い続け、ついに心が悲鳴をあげた彼女の姿に、自分を重ねた看護師も多いはずです。
「もっと頑張れたはず」「私がついていなきゃ」……その真面目さが、いつしか自分を追い詰める凶器に変わってしまう。
今回は、新井先生のバーンアウトを「他山の石」とするのではなく、一生ナースとして輝き続けるための『心の境界線の引き方』を回診します。
この記事の結論(カルテ)
- 対象症例: 「休むことに罪悪感がある」「最近、仕事以外の感情が動かなくなった」と感じている重責ナース。
- ドラマの視点: 新井先生のバーンアウトは「能力不足」ではなく「過剰な責任感」と「環境の過酷さ」のミスマッチ。
- アセスメント: 心のキャパシティは有限であると認め、「患者の人生」と「自分の人生」を切り離す訓練が必要。
- 看護の真髄: 「自分をケアできない人」は、長期的に患者を救い続けることはできないと知ること。
※ドラマの設定を借りた、筆者独自の考察と創作を含む記事です。
問診室:新井先生を壊したのは「誰」だったのか?





『コウノドリ』の新井先生……。
あのNICU(新生児集中治療室)での彼女の姿は、僕ら医療従事者にとって他人事とは思えないよね。誰よりも赤ちゃん想いで、誰よりも自分を追い詰めてしまった彼女を、君はどう見ていた?



あんなに一生懸命だったのに、ある日突然、糸が切れたみたいに動けなくなっちゃって……。
見ていて本当に胸が苦しかったです。でも正直、私も「もっと頑張らなきゃ」って思っている時ほど、彼女みたいにフッと消えてしまいたくなる瞬間、少しだけ分かっちゃうんです。



真面目で責任感が強い人ほど、その『正しさ』が自分を縛る鎖になっちゃうんだよね。「自分がいないとNICUが回らない」「この子の命は私が背負っている」……その献身さは尊いけれど、一人の人間が背負える重さには限界があるんだ。



限界……。でも、患者さんの前では「疲れました」なんて言えないし、休むと周りに迷惑がかかるって思っちゃいます。新井先生みたいに心が燃え尽きる前に、私たちにできることって本当にあるんでしょうか?



あるよ。一番大切なのは、「良い医療者である前に、一人の人間として自分を大切にする」こと。新井先生の症例を振り返りながら、僕たちがどうやって『心の防衛線』を引けばいいのか、具体的なステップを見ていこうか。
回診記録:バーンアウトの予兆を見逃さないための症例分析


症例1:献身の裏に隠れた「全能感」の罠





新井先生は、超低出生体重児の赤ちゃんとその家族に対し、一切の妥協を許さず向き合っていました。
しかし、その情熱はいつしか「私が救わなければならない」という過度な自負、つまり『全能感』の罠へと彼女を誘い込んでいきました。



新井先生の「私たちが諦めたら、この子に未来はない」という言葉。それは正しいけれど、同時に自分を逃げ場のない場所に追い詰める言葉でもあるんだ。
看護の世界でも、責任感が強い人ほど「自分が頑張ればなんとかなる」と考えて、自分自身の限界を無視してしまう傾向があるね。



確かに……「私がもっと注意していれば」とか「私があの時気づいていれば」って、ついつい自分を責める方向に考えがいっちゃいます。
でも、それって実は「自分なら完璧にできたはず」っていう、ある意味での思い上がりなのかもしれないって、今ハッとしました。
症例2:心が折れる音がした日――逃げる勇気の重要性





激務とプレッシャーの中、ついに新井先生は燃え尽き、病院から姿を消しました。周囲には「無責任」に映ったかもしれませんが、それは彼女が「自分」を守るために無意識に選んだ、最後にして唯一の防衛本能だったのです。



バーンアウトは「心が枯渇した状態」なんだ。新井先生が現場を離れたのは、無責任だったからじゃない。むしろ責任を感じすぎて、心がもう空っぽになっていたんだよ。
僕たちナースに知っておいてほしいのは、本当に折れてしまう前に『戦略的に逃げる』ことは、医療従事者として生き続けるための大切なスキルだということ。



「戦略的に逃げる」……。
その言葉を聞くと、少しだけ気持ちが楽になります。新井先生がその後、自分を取り戻してまた医療の世界に戻ってきたように、一度離れることで守れる「未来の看護」もあるのかもしれないですね。
※ここから先は、ドラマの考察を超えた、自分自身を壊さないための「メンタル防衛戦略」の話になります。
【本日の処方箋】「完璧なナース」を卒業するセルフケア術





新井先生が燃え尽きてしまったのは、彼女の能力が低かったからでも、精神が弱かったからでもありません。「救いたい」という純粋な願いと、過酷な現場のギャップを、すべて自分の責任として埋めようとしてしまったからです。
私たちナースにとって、もっとも大切な技術の一つは「自分をケアする技術」です。自分が倒れてしまえば、救えるはずの未来の患者さんも救えなくなります。
まずは、「完璧でない自分」を許し、心の境界線を引く練習を始めましょう。
対策:心が悲鳴をあげた時に踏むべき「3ステップ」
- 「感情の麻痺」を自覚する
「悲しいはずなのに涙が出ない」「仕事のこと以外考えられない」……。これはバーンアウトの赤信号です。新井先生のように糸が切れる前に、自分の心の枯渇を認める勇気を持ちましょう。 - 「心理的離脱」の時間を強制的に作る
職場を一歩出たら、仕事のスイッチを完全にオフにする習慣を。スマホの通知を切る、全く別の趣味に没頭するなど、「患者さんの人生」から自分の人生を切り離す時間を確保してください。 - 「戦略的撤退(休職・転職)」を恥と思わない
もし今の環境が「自分を削らなければ成り立たない」場所なら、そこから離れることは敗北ではなく、プロとしての『防衛策』です。新井先生が一度現場を離れて自分を取り戻したように、あなたにも「休む権利」があります 。
💡 ナースXのワンポイント・メモ:医療従事者のメンタルヘルス
燃え尽き症候群(バーンアウト)は、決して個人の資質の問題ではありません。厚生労働省も、医療従事者の過重労働やストレス管理を重要な課題として挙げており、組織全体でのメンタルヘルス対策を推進しています。自分一人で抱え込まず、職場の産業医や外部のカウンセリングなど、公的なサポートを活用することも検討しましょう。
その優しさが燃え尽きてしまう前に。自分を『守れる場所』を選ぶ勇気を


- 責任感が強いからこそ、休むことが「逃げ」だと思って自分を責めていませんか?
- 患者さんの命を預かる重圧に、心が押し潰されそうになっていませんか?
- 今の職場は、あなたが「一人の人間」として健やかに働くことを支えてくれていますか?



新井先生が一度現場を離れたことで、またいつか医療に戻れる可能性を残せたように、今の場所から離れることは、君の『一生モノの看護師人生』を守るための賢明な判断なんだよ。
君のその深い共感性と責任感は、もっと環境の整った場所なら、さらに多くの人を救う力に変わるはずだ。
無理をして完全に壊れてしまう前に、今の自分の市場価値を確かめて、もっと『自分を大切にできる働き方』を一緒に探してみよう。
\ あなたの「優しさ」を枯らさないために /
※今すぐ転職する必要はありません。
「今の職場が普通かどうか」を知るだけでもOK。



新井先生が最後に見せたあの涙、それは決して「弱さ」ではなく、命に真摯に向き合い続けたプロとしての証です。
もし今、あなたが彼女のように「もう一歩も動けない」と感じているなら、それは心があなたを守るために出している大切なSOSです。その声を無視せず、どうか自分を一番に労わってあげてください。
あなたが健やかであってこそ、届けられる看護があります。それでは、また次のカンファレンスでお会いしましょう。



みなさんも、新井先生のように「誰にも頼れず一人で抱え込んでしまった」経験はありますか?
「本当はもう限界……」という現場での切実な思いや、あなたが実践している心の守り方、ぜひ下のポストからそっと教えてくださいね。
※明日から行かなくていい。とにかく心と体を休ませることが優先と感じている方。
\ とにかく仕事を辞めたい/
「職場の人間関係がツライ…」「ドラマのあのシーン、どう思った?」など、誰にも言えない本音をナースXとひかる先輩に送ってみませんか?
いただいた相談は、ブログ内で回答させていただくことがあります(匿名でOK!)。
この記事は、TBSテレビ『コウノドリ』(2015)公式サイト、厚生労働省『こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト』等を参考に作成しています。
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